水道用語収録目録:地下水

名古屋水道修理隊

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地下水
以下は「地下水」について定義は含めていませんが地下水の成り立ちから活用、問題点、そしてその重要性までを総合的に扱っています。
●地下水の詳細解説 ― 水資源としての役割と課題
地下水とは、地表から浸透した水が地下にたまって形成される水のことであり地球上の淡水資源の約3割を占めるとされる極めて重要な自然資源である。特に日本のような降水量の多い国では、古来より地下水は生活用水、農業用水、工業用水などさまざまな形で利用されてきた。現代においても、多くの地域で地下水は水道水の供給源として、また災害時の代替水源として重要な位置づけにある。
●地下水の生成と存在の仕組み
地下水は、主に雨水や雪解け水が地表から土壌に染み込み地中深くにある不透水層の上に溜まることで形成される。土壌や岩石の隙間を通って流れる過程で地下水はろ過され通常は地表水に比べて高い水質を保つとされている。地下水が蓄えられる場所は「帯水層」と呼ばれ、この帯水層の性質や分布、深さにより、地下水の量や質が大きく異なる。帯水層には主に二つのタイプがあり、比較的浅い場所に存在する自由地下水と粘土層などの不透水層に挟まれた深い場所にある被圧地下水がある。自由地下水は降水と連動して水位が変化しやすく被圧地下水は外部から圧力がかかっており、井戸を掘削すると自噴することもある。
●地下水の利用
地下水の利用は多岐にわたる。古くは井戸を掘って手押しポンプや桶でくみ上げる方法が一般的だったが現在では電動ポンプによる効率的な取水が主流である。用途別に見ると、まず生活用水としての利用がある。地方都市や農村部では、水道インフラが整備される以前から地下水が飲料や炊事、洗濯に使われていた歴史がある。農業においても地下水は欠かせない資源である。とくに夏季の水田灌漑やハウス栽培などにおいて地表水と組み合わせて活用されている。地下水は水温が比較的安定しているため、寒冷地では凍結の心配が少なく、また高温時には植物にやさしい水温で散水できるという利点がある。
工業利用の面では、冷却水や洗浄水としての利用が多い。工場によっては地下水の安定供給に依存しているケースもあり供給の安定性と品質が重要視される。さらに温泉や地熱発電の熱源としても地下水は活用されており、その用途は年々広がっている。
●地下水の水質と管理
一般的に地下水は、地表水よりも水質が安定しているといわれている。その理由は、地中を通過する過程で土壌や砂礫によって自然にろ過されるためである。しかしながら完全に安全というわけではない。例えば、農薬や肥料に含まれる硝酸性窒素が長年にわたって地下に浸透すると地下水に蓄積されてしまうことがある。また、工場跡地などでは有機溶剤や重金属が地下水に混入することもあり、これらは健康被害の原因となるため厳重な監視が必要である。日本では、水道法や地下水法などに基づき、地下水の採取量や水質について厳格な規制が行われている。定期的な水質検査が義務付けられており特に飲用水として地下水を使用する場合には、基準を満たすための浄水処理が必要になることもある。近年では地下水のモニタリング体制が強化されており、観測井戸や水位計を設置して地下水の動態を常時把握する取り組みも進められている。
●地下水の過剰利用と環境問題
地下水は自然に補充される速度が非常に遅いため過剰に採取するとさまざまな環境問題を引き起こすことがある。代表的な例が「地盤沈下」である。地下水を大量に汲み上げると、帯水層が収縮し、地面が沈下してしまう。建物やインフラが損傷したり、洪水リスクが高まったりする。日本では昭和30年代から50年代にかけて大都市圏で深刻な地盤沈下が発生し、現在でも一部地域では規制が続いている。また、地下水の過剰利用は周囲の自然環境にも影響を与える。たとえば、地下水位が低下すると、周辺の井戸が枯れたり湿地帯が乾燥したりすることがある。動植物の生息環境が変化し、生態系に悪影響を及ぼす。さらに、沿岸部では地下水位の低下が「塩水化」を招くことがあり、海水が帯水層に侵入してしまうと飲用や農業には使えなくなる。持続可能な地下水管理の重要性近年では、地下水を持続可能に利用するための管理が強く求められている。持続可能な地下水利用とは、再生可能な範囲で水を利用し、その質と量を長期にわたって維持していくことである。そのためには、地下水の涵養(自然回復)能力を把握し、年間採取量を適切にコントロールする必要がある。涵養を促すための取り組みとしては、都市部における透水性舗装の導入や、雨水浸透ますの整備などがある。また、森林整備によって地表の保水力を高め地下への浸透を促進することも有効である。これらの対策により自然の水循環を保ちつつ人為的な影響を最小限にとどめることが可能となる。
●災害時の備えとしての地下水
地下水は災害時の非常用水源としても重要視されている。地震や断水が発生した際、地表の水道インフラが破損しても地下にある水源が無事であれば生活用水の確保が可能となる。そのため、地方自治体や一部の企業・学校では、地下水井戸を災害用に整備し非常時には地域住民に開放する取り組みが進められている。

災害に強い水源としての地下水の価値は、東日本大震災や熊本地震などの際に改めて注目された。日常的に地下水を使用している施設では、電力があれば継続利用が可能であるため、停電対策と合わせて給水体制の強化が図られている。