水道用語収録目録:ソルダー

名古屋水道修理隊

水道用語掲載一覧

ソルダー
水道配管における接合方法のひとつとして、古くから使用され続けているのが「ソルダー付け」である。この技術は、特に銅管同士、あるいは銅管と銅製継手を接合する場面で主に使用される。ソルダーは、接合部分に金属を溶かして流し込み、母材と一体化させることで、強固で長期にわたり信頼性の高い接続を実現する。現代の水道設備においては、耐久性、作業性、密閉性の観点から極めて重要な役割を果たしている。
●ソルダー接合の目的と利点
ソルダー接合の最大の目的は、配管の間に液密・気密性の高い接続部を作り出すことである。配管内部には常に圧力のかかった水が流れているため、接合部分からの漏水は絶対に避けなければならない。ソルダー付けは、他の接合方法(ねじ込みや圧着接合)と比べても接合強度と密封性に優れており、特に高温や高圧への耐性が求められる箇所での使用に適している。また、金属同士を溶かし込むような接合を行うため、腐食や劣化の進行を最小限に抑えることができる。適切な施工と材料選定が行われれば、数十年単位の長期使用にも耐える耐久性がある。さらに、配管径やレイアウトに応じて比較的柔軟に対応できる点も、大きな利点である。
●ソルダー作業における基本手順
ソルダーによる接合は、いくつかの重要な手順を踏むことで初めて正確に行われる。作業は以下の順序で進められる。
1. 切断と面取り
 まず銅管を必要な長さに切断し、切断面のバリ取りと面取りを行う。切断面が滑らかでない場合、接合部に隙間が生じ、ソルダーが均一に流れず、漏水の原因となるためである。
2. 清掃
接合する銅管と継手の表面をヤスリやスチールウールで研磨し、酸化皮膜や汚れ、油分を除去する。表面が清潔であるほど、ソルダーの濡れ性が向上し、均一な流れが得られる。
3. フラックスの塗布
清掃後の銅管と継手にフラックスを塗布する。これは、加熱時の酸化防止、ソルダーの流動促進、接合面の活性化などを目的としており、接合品質に直結する重要な工程である。
4. 加熱
トーチを使って接合部分を加熱する。温度管理が重要で、必要以上に加熱すると銅管自体が変形したり、フラックスが炭化してしまい、接合不良を引き起こす。また、炎の当て方にも注意が必要で、均一に熱が伝わるように意識して作業する。
5. ソルダーの供給
銅管と継手が適切な温度まで加熱されたことを確認し、ソルダーを接合部に流し込む。このとき、毛細管現象によってソルダーが接合面全体に吸い込まれ、内外に均一な接合層が形成される。ソルダーの種類によって融点が異なるため、使用している材料に応じた適切な温度管理が必要である。
6. 冷却と清掃
接合が完了したら自然冷却を行う。強制的に冷やすとクラックなどの原因になるため、基本的には空冷が望ましい。冷却後、余分なフラックスを取り除き、接合部を清掃して仕上げる。
●使用材料とその選定
ソルダー材料には鉛入りと無鉛のものがあり、近年は衛生面や環境保護の観点から無鉛タイプの使用が一般的となっている。特に飲用水を供給する配管では、鉛が水に溶出するリスクを考慮し、無鉛ソルダーを使用することが法律や条例によって定められている地域も多い。
ソルダーの種類には、主にスズをベースとした合金が使われる。具体的にはスズと銅、あるいはスズと銀の合金が代表的で、それぞれ溶融温度や流動性、接合強度に違いがある。使用する温度帯や求められる強度によって適材を選定することが求められる。また、フラックスの種類も用途に応じて選ばれる。水溶性、非腐食性のフラックスは住宅配管に適しており、洗い残しによる腐食リスクを最小限に抑えることができる。
●注意点と品質管理
ソルダー接合は一見すると単純に見えるが、高品質な仕上がりを実現するには熟練の技術が求められる。温度管理、加熱時間、ソルダーの量、塗布の均一性など、ひとつひとつの要素が接合品質に直結する。特に気をつけるべき点は「冷間はんだ付け」と呼ばれる不良現象で、これは十分な加熱が行われないままソルダーが固化し、接合強度が極端に低下することを指す。外見上は正常に見えても、使用中に漏水や破損を引き起こすリスクがある。また、フラックスの洗浄不足もトラブルの原因となる。残留したフラックスが化学反応を起こし、長期的に腐食やピンホールを発生させることがあるため、施工後の確認と清掃は欠かせない。
●現場での活用と近年の動向
今日の水道工事では、配管材や接合方式が多様化しており、圧着式や樹脂継手など新しい工法も増えている。しかし、ソルダーはその高い信頼性と耐久性から、今なお多くの現場で重用されている。特にリフォームや補修工事において、既存配管との互換性を保つためには不可欠な技術とされている。また、近年では電気式の加熱器具や温度センサー付きのトーチなど、より安全かつ正確な施工を可能にするツールも普及してきており、作業効率の向上と品質の安定化に寄与している。

以上のように、ソルダーによる水道配管の接合は、古典的でありながら非常に実用性が高く、今後も一定の需要が続くと見込まれる。適切な知識と技術をもって施工すれば、配管の寿命を最大限に引き延ばすことが可能であり、信頼性の高い水道システムの構築に大きく貢献する技術である。